社会

医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<うつ病>タンパク質「シスワン」が脳のストレスを悪化!?

 春に「うつ病」を発症する人は多い。異動や転勤など環境変化が大きくなる時期でもある。寒暖差が大きくなると、自律神経がバランスを崩しやすくなる。そうした心身の負荷によって「うつ病」を発症しやすくなるのだ。

 一見すると「うつ病」は、本人のやる気がないだけと思われがちだが、精神的ストレスや身体的ストレスが原因で脳がうまく働かなくなっている状態を指す。

 2020年、東京慈恵会医科大学の近藤一博教授らが、うつ病の原因となる「ヒトヘルペスウイルス6」が作るタンパク質「SITH-1(シスワン)」が発症に関与していると発表した。「SITH-1」は脳に潜伏し、脳のストレスや疲労を悪化させるという。

「うつ病」患者の約8割がこのタンパク質の影響を受けていて、血液検査で調べることができる。

 それまでは「うつ病」は「心の病」と位置づけられてきたが、近藤教授らは、この研究発表以来「うつは心が弱かったり、自分の責任でなるものではない」と治療を呼びかけている。

「うつ病」のリスクを軽減するには、寒暖の差に柔軟に対処することが不可欠だ。まずは、出かける時は羽織着を1枚持参することを心がけること。あとは、快適な睡眠、バランスのよい食事、ゆっくり入浴することで体がリラックスする状態にすることもポイントだ。

 適度な運動や、趣味などによるストレス発散も、うつの解消につながる。天気のよい日には軽くウォーキングや散歩をすることもおすすめだ。

「うつ病」は、セルフケアで対処するにも限界がある。一人で抱え込まずに、まずは専門医の受診やカウンセラーへの相談も必要である。

田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。

カテゴリー: 社会   タグ: , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<マイクロスリ―プ>意識はあっても脳は強制終了の状態!?

    338173

    昼間に居眠りをしてしまう─。もしかしたら「マイクロスリープ」かもしれない。これは日中、覚醒している時に数秒間眠ってしまう現象だ。瞬間的な睡眠のため、自身に眠ったという感覚はないが、その瞬間の脳波は覚醒時とは異なり、睡眠に入っている状態である…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<紫外線対策>目の角膜にダメージ 白内障の危険も!?

    337752

    日差しにも初夏の気配を感じるこれからの季節は「紫外線」に注意が必要だ。紫外線は4月から強まり、7月にピークを迎える。野外イベントなど外出する機会も増える時期でもあるので、万全の対策を心がけたい。中年以上の男性は「日焼けした肌こそ男らしさの象…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<四十肩・五十肩>吊り革をつかむ時に肩が上がらない‥‥

    337241

    最近、肩が上がらない─。もしかしたら「四十肩・五十肩」かもしれない。これは肩の関節痛である肩関節周囲炎で、肩を高く上げたり水平に保つことが困難になる。40代で発症すれば「四十肩」、50代で発症すれば「五十肩」と年齢によって呼び名が変わるだけ…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , |

注目キーワード

人気記事

1
宮城野親方(元白鵬)が「電撃退職」する意外な理由/五月場所を10倍楽しむ「大相撲覆面座談会」(2)
2
ドロ沼ヤクルト「借金20で高津監督休養」次の候補に挙がる6人の面々
3
前田健太「カブス移籍」で現実のものとなる上原浩治の論評「まさに別格のボール」
4
2軍のDeNA筒香嘉智「事実上の戦力外⇒引退拒否⇒またアメリカへ」元同僚の刺激
5
弱すぎるロッテに愛想が尽きて「外野席チケット500円で投げ売り」しらけムードの現場