高校野球ファンなら誰もが知る「箕島×星稜、延長18回の死闘」。このビデオを所有するだけではなく、今でも年に数回は観るという、高校野球評論家の上杉純也氏が「高校野球の引き分け再試合は、なぜこうも熱いのか?」を独自の視点で分析する。
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高校野球の延長戦、引き分け再試合というと、田中将大(駒大苫小牧)VS斎藤佑樹(早稲田実業)の06年夏の決勝戦を思い出すことでしょう。延長15回1−1で決着がつかず、翌日の月曜日に再試合。ハンカチフィーバーもあって、誰もがテレビにかじりつきましたよね。
僕は日曜日の試合を甲子園のスタンドで、早実を応援しながら観ていました。早実は投手がエース斎藤しかいないので、再試合になったら苫小牧が勝つだろう。だから、この試合で決めてくれ! と願ってました。だけど、ロースコアで均衡が破れないジリジリしたイニングが続いていくと、「このままどっちも点が入らないほうがいいのかも」というムードが客席に沸き立ってくるんです。聖地・甲子園では異様な雰囲気があたかも磁場のように発生しますね。常に守備側を応援しているムードというか、あれは打席の選手にはプレッシャーだったでしょう。
甲子園は判官びいきの場所です。前評判で弱いとされるほうを皆で応援する。だから、善玉と悪玉が生まれます。そこが味なんです。
熱狂を引き起こした甲子園の引き分け再試合というと、①板東英二(徳島商)と村椿輝雄(魚津)の投げ合い(58年準々決勝・延長18回0−0)、②井上明(松山商)と太田幸司(三沢)の投げ合い(69年決勝・延長18回0−0)、そして、③田中将大(駒大苫小牧)と斎藤佑樹(早稲田実)などがあります。
これ、試合が終わった今では誰もが忘れちゃっていますが、いずれも戦前の下馬評は、先にあげたチームのほうが断然上だったんですよ。強いチームに劣るチームが立ち向かう図式があって、それに加えて、エースの顔つきを見ると、みごとなまでにどれも「力自慢の田舎の大将」VS「紅顔の美少年」になってるんですよね。
となると、ふだん野球や高校野球に興味のない人たちが、どちらを応援するかというと一目瞭然(笑)。今をときめく板東さんやマーくんは、当時は悪玉でした。それがゆえに、応援が盛り上がったんです。
この引き分け再試合というルール。その板東英二さんが作ったことはご存じでしょうか。その経緯は昭和33年(58年)、徳島商業野球部の激闘に遡ります。板東投手は春季四国大会の高知商戦で延長16回を投げて勝ち、翌日の高松商戦で延長25回。これは高校生には健康上問題があるということで「延長18回で打ち切り、翌日再試合」というルールが誕生。その適用第1号も板東さん本人でした。先にあげた魚津高戦です。その後、松坂大輔フィーバーの98年、横浜VSPL学園の延長17回(9−7)の試合がきっかけで、01年から延長15回制に短縮され、現在に至ります。
でも、思うんですよ。むしろ過酷な再試合より、その日に決着つけちゃえばって。だって、必ず白黒ついてしまうのが、甲子園ですから。
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